【バックナンバー】Clovertechの海外Martech通信 2024年3月号 : マーケターがCookielessの脅威をわかってなさすぎる

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Clovertechの海外Martech通信 2024年3月号:マーケターがCookielessの脅威をわかってなさすぎる

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こんにちは。池上晃平です。

2月から、私の会社メールの署名欄にこのメルマガの宣伝を書いているのですが、そのおかげで読者が11名に増えました!ありがとうございます!

【今月のTopix】

  1. マーケターがCookielessの脅威をわかってなさすぎる
  2. 韓国のSNSコンテンツ・ライブ制作がすごかった話

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■□1 – マーケターがCookielessの脅威をわかってなさすぎる

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私が新卒から10年間携わってきた広告代理店を離れてからもう1年以上経つのですが、いまだに世界中のオンラインビジネス事業者が、サードパーティCookieの廃止に対して、楽観的な態度を変えていないようです。

A month after Google started turning off third-party cookies in Chrome and marketers are still apathetic
https://digiday.com/marketing/a-month-after-google-started-turning-off-third-party-cookies-in-chrome-and-marketers-are-still-apathetic/

 

Though cookie alternatives are out there, agencies have their issues with them all
https://digiday.com/media-buying/though-cookie-alternatives-are-out-there-agencies-have-their-issues-with-them-all/

 

詳しくはDigidayのこれらの記事を読んでいただきたいのですが、ここではCookielessについて改めて整理して書いておきたいと思います。

一般的に”Cookieless”には、2つの文脈があります。1つ目は、GDPRなどの個人データ保護規制。2つ目は、サードパーティCookieの廃止です。

GDPRが施行される2018年以前は、インターネット上での個人情報以外のあらゆるユーザーデータについては規制がなく、取得し放題、活用し放題である状況でした。個人情報以外のユーザーデータというのは、例えば閲覧したウェブページ、検索したキーワード、スマートフォンの位置情報、ECで購入した商品、起動したアプリなどです。これらの様々なデータは、ユーザーに付与された固有ID(Cookieに保存されたり、IDFAを使ったり)で紐づけられ、デジタル広告の出稿に使われたり、ブランドのマーケティングに活用されたりしてきました。

(皆さんも「なんで私が〇〇好きなことを知っているの?」とネット広告のバナーに驚いたことがあると思いますが、あれは知らないうちに集められたあなたのユーザーデータが活用されています。)

2018年にEUで施行されたGDPRでは、従来の個人データに加えて、1人のユーザーを特定できる可能性がある全てのデータ(IPアドレスやIDFAなど固有IDだけでなく、サイト閲覧データやブラウザ情報なども!)が、データ保護の規制対象とされました。GDPRでは、これらのデータをユーザーから取得する際には、事前に同意を取ることを義務付けています。つまりGoogleやFacebookのようなビッグテックが勝手にあなたの情報を集め、それを勝手に第三者に売ってお金に変えることをGDPRでは規制しているのです。

このEUにおけるデータ保護の潮流に合わせて、ユーザーデータの保護に乗り出したのがAppleです。Appleは2017年から、上記のようなユーザー行動データを取得するための仕組み(Cookie、ローカルストレージなど)を自社ブラウザに実装しはじめ、2020年にはついにサードパーティCookieは完全にブロックされるようになりました。

2020年は私もまだ広告代理店にいたので、Appleの対応には非常に衝撃を受けました。サードパーティCookieがなくなれば、デジタル広告で使われている一般的な手法のほとんどは機能しなくなります。リターゲティング広告は配信できませんし、コンバージョン計測も十分機能しなくなります。GoogleやFacebookがかき集めた詳細なユーザー情報を活用したターゲティング(もうすぐ大学入学とか、世帯年収いくらとか、最近〇〇を調べたとか)も使えなくなります。

このAppleのサードパーティCookie廃止を見て私は「早くデジタル広告業界から足を洗わなきゃいけない」と思いました。

今Google広告やFacebook広告を出稿している方は「2020年からiOS向け広告のパフォーマンスはそんなに落ちていないから、うちは大丈夫!」と思っているかもしれません。

でも、本当にパフォーマンスが落ちていないと言えるのでしょうか?GoogleもFacebookも計測できなかったiOSのコンバージョン数を推計で算出して、実際に計測されたコンバージョン数に加算しています。そして、iOSのコンバージョン数を推計するロジックは機械学習で算出しているため、ブラックボックスです。もしGoogleやFacebookが広告売上を減らさないために、コンバージョン数を水増ししているとしたら、あなたは気が付くのでしょうか?

コンバージョン モデリングでプライバシーを保護しながら広告の効果検証を
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/data-and-measurement/how-conversion-modeling-improves-marketing/

また今年になってCookielessが騒がれ始めているのは、EUでのデータ保護規制やAppleの対応を受け、Google Chromeが2024年後半にサードパーティCookie廃止を決定したためです。PCにおいてもスマホにおいてもシェアNo.1のGoogle ChromeがサードパーティCookieを廃止すれば、2020年以上に大きな影響となるはずです。

サードパーティCookieを使った広告の代替として、アドテク業界は様々な新しい広告を開発していますが、それらは従来の高度なターゲティング広告の完全な代替手段にはなりえません。データクリーンルーム、リテールメディアなど、お聞きになったことがあると思います。ユーザーデータが使えない以上、それらは従来の広告手法の劣化版であり、従来よりパフォーマンスが上がることはあり得ません。デジタル広告の効率は、これからますます悪くなります。

最近私たちのお客様からもコロナ禍以降「ECで新規顧客の獲得効率が落ちてきている」「ECで既存顧客が戻ってきてくれなくなっている」というご相談をいただくことが増えています。こういう現象が起こるのは、上記のようなCookielessの文脈を理解していれば、当たり前のことです。今までとまったく同じ施策をやっている限り、2024年末まではECの集客が減って、パフォーマンスが落ち続けるのが自然なのです。

そしてCookielessの文脈を踏まえるなら、代理店のストラテジストやブランドのマーケターはデジタル広告の成果を上げる方法ではなく、「広告がなくても、ユーザーが自社のECで購入したくなる理由は何か?」を考える必要があるのです。ユーザーに関するデータが集められないからといって、ユーザーがインターネットを使わなくなったわけではありません。広告がなくても、ユーザーが見たいものや欲しいものはちゃんと売れるのですから。

弊社では上記のようなトレンドを受けて、自社ECやアプリにショート動画やライブ配信を埋め込めるソリューションの販売に昨年夏から力を入れていますが、残念ながら現状は「自社メディアでのコンテンツ配信を頑張ってやろう!」というブランドさんはあまり多くありません。

ライブ配信を使って既存顧客を呼び戻したいとか、動画コンテンツを使って新規顧客を呼びたい、みたいなご提案もさせていただけるので、もしこのメルマガを読んでCookieless対応に危機感を覚えてくれた方がいたら、ぜひご相談ください!あなたのブランドが独り勝ちできるチャンスだと思います!(やけくそ)

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■□2 – 韓国のSNSコンテンツ・ライブ制作がすごかった話
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昨年夏から動画・ライブ関連のソリューション販売をしているのですが、私たちは大きな壁にぶち当たっていました。それは配信する動画コンテンツがないことです。そもそも日本国内でみんなが知ってるブランドでも「配信するための動画がない!ライブ配信をやる体制も知識もない!外注する費用もない!」という状況でした。かろうじてインスタグラムはどの企業もやっているので、インスタグラムの動画やライブ配信を活用しようとするのですが、基本的には素人がスマホで撮った映像なので、そこからモノが売れることはありませんでした。

実際私たちも日本国内で低価格で高品質なライブ制作を行える制作会社を探してみたのですが、存在しませんでした。簡単なライブ配信1時間を普通の映像制作会社に依頼すると、50万円~100万円程度の制作費がかかります。しかしながら、上記のようなブランドが制作費として捻出できるのは、多くても20万円程度だと思います。

一方韓国では、高品質でカッコいいライブ配信を毎日のように放送しています。ライブを見た視聴者は、店頭で接客を受けたかのように商品のことを理解でき、そのまま商品購入をしています。

なぜ韓国ではこのような映像制作が可能なのかを知りたくて、2月に韓国に行き、最大手のMUSINSAや、内製でライブをやっているブランドのライブ配信を見学に行ってきました。

学んだことが多すぎて、詳しくはここに書ききれないのですが、韓国の制作現場を見て驚いたことが2つあります。

1つは、制作会社の方々が、ライブ映像の成果(モノが売れたかどうか?)にすごくコミットしているという点です。顧客の捻出できる限られた予算で、いかにわかりやすく見やすく商品を見せるか、をものすごく工夫して、様々な技術を使って制作を行っていました。デジタル広告で成果を出すために、LPやバナーをとにかく大量に作ったりABテストを行ったりすると思うのですが、あのようなことをショート動画やライブ映像で行っていました。(日本の映像制作会社の方で、そのようなマインドの方にはまだお会いしたことがありません)

2つ目は、ものすごく工夫をしてコストダウンをしているという点です。実際韓国でも、スタジオを借りてライブ撮影をすると、日本と同じくらいの費用がかかってしまいます。ただライブ制作の仕事がたくさんある韓国では、1日のスタジオや機材レンタルで、朝から夜まで4本のライブ制作をこなすそうです。またライブ撮影の合間にSNS用のショート動画や、サイト内の使い方説明動画などを一緒に撮影することで、費用を抑えて顧客のためのコンテンツを作成していました。

もうここに書ききれないほどたくさんのノウハウがあったので、詳しくは私たちに直接連絡いただきたいのですが、まだまだ日本の映像制作ではやれることがあるなと思っています。

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最後までお読みいただきありがとうございました!
次回の発行は、翌月10日頃を予定しています。

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